「三菱重工業」 

画像出典:「三菱重工業株式会社公式サイト (https://www.mhi.com/jp)」

三菱重工業 名古屋航空宇宙システム(通称 名航)の協力会社に伺った時の話である。
偶然、同 工作機械事業部の二井谷技師ともう一方技術者の方(お名前は失念した)がいらっしゃった。
ひととおり話終えた後、ふと先方の社長からその技術陣2人に相談があった。

「重工さん。
全く関係ない話で、なおかつ御社のマシニングセンタでなく
恐縮なのですが、あるメーカの機械の揺れに困っています。加工精度も出ていません。
何か良い方法はないでしょうか?」

一人は言った。

「私はマシニングセンタの技術者ではございません。
それに他社のマシニングセンタの構造は分かりかねます。
お役に立てず申し訳ございません」

一方、二井谷技師はこういった。

「話は少しそれますが、ヨットは工作機械とは比べ物にならないくらい揺れます。
ヨーイング、ピッチング、ローリング等の様々な揺れが発生いたします。
しかし、ヨットにはジャイロという、フライホイールの様な金属板が回転しており
揺れを無理やり押し付けるわけではなく、逆方法の運動を与えて、揺れを相殺します。
無理やり揺れを抑えつけるのではなく、揺れを逃がす方法をメーカとご相談されてはいかがですか?」

私は思った。
「ちょっと待て。マシニングセンタにジャイロなんてつけられるわけはない。
それに問題が振動だとすると、案内面の精度や主軸の振れを疑うべきなのでは?
お金をかけないなら、加工条件を落とすのが一番だろう・・・」

ただぁ!(粗品さんごめんなさい・・・)

私は気づいた。
先方の社長の目が輝いている。
尊敬のまなざしだ。

これが教養。
技術者の格の違いを見せつけられた。
ちなみに、二井谷氏もマシニングセンタの技術者ではないと聞く。

それからというもの、先方の社長は二井谷技師のファン。
なにかあったら、二井谷技師に相談していたらしい。

「他メーカの不具合なんで、一円の得にもならないじゃないか。販管費の無駄だ」
とおっしゃる方はいらっしゃるかもしれません。

ただ、営業の方なら同意してくれるかもしれないが
普通(普通という言葉は嫌いですが)、営業というのは
「ぜひ弊社の製品をPRさせてください!少しのお時間で結構ですので、面談させてください」
とテレアポをするのが通例だと聞く。
(キーエンスさんは毎週月曜日は一日中、テレアポをしているらしく
そうすると、振られてもめげない鋼の心が出来上がるらしい・・・)

二井谷氏は違う。
お客様の方から
「ぜひこちらへお越しください!」
とおっしゃっているのである。

ものを売る中で
「幾千の中からお客を探しだし」
「お客に立ち止まってもらい」
「話を聞いてもらう」
ことがなにより一番難しい。
これをすべてお客様自らお願いしてくるのである。
嫌がるお客にプレゼンするのは苦痛でしかない。

ちなみに、二井谷氏は現在、ニデックマシンツールの社長をなさっているらしい。

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